16. 良くあるクレーム(あまりオープンにしたくないのですが・・・)
◆ 製袋不良
ポリ袋の製袋クレームのナンバー 1 は何といっても製袋不良の「シール不良」です。
このシール不良は、大別して 2 つのクレーム形態に分かれます。
まず、1つがシールする際の熱不足です。
そうしてもう一つが、加熱し過ぎた熱過多です。
要は、過熱不足でもクレーム原因になり、熱過多でもクレーム原因になり得るわけです。
大別しますとこの2つなのですが、他には袴下不良(シールから下部分のバラツキ)やシール斜め不良、カット不良(ギザキザカット/裁断片混入)、などがありますが、シール不良は発生してしまうと袋としての基本的な機能を欠くわけですから、とても重要かつ出してはいけないクレームと言えます。
(1) シール不良(溶着不良)
シール部分を 180 度に引裂くと簡単に剥がれてしまう。
また、引っ張ると、徐々に剥がれていくという症状です。
特にこの症状はシール中央部分に多発します。
それとは反対に熱のかけ過ぎの場合は、シールしている際の部分が容易に「プチッ」と切れてしまったり、内容物を充填すると「スパッ」と底抜けを起こすといった症状です。
また、熱板シールの場合、シールバーの歪みが発生していると上記の状況の混合の症状さえ発生します。
シール不良はポリ袋の「物を入れる」という基本的機能が損なわれる最低条件のクレームですが、一番多発しているのも現実です。
これは、機械のメンテナンスは当然としても、1枚でもたくさん生産することが 1 日の水揚げという加工賃体系の弊害と、オペレーターの長年の感に依存しすぎるライン構成の弊害であり、(それだけ標準化しにくいラインでもありますが)オペレーターが何かの理由で変更や交代した場合など手順化されていない事がバックボーンにあるようです。
最後に規格基準ですが、 JIS Z-1711 「業務用及び家庭用軽包装袋として用いられるポリエチレンフィルム製袋について」としてシール強度及び長さなどの規定をしているのですが、本規定はあまりにも規格基準値が低く、産業用ではあまり実用的ではないと考えております。
(2) 長さ不良(カット不良)
「長さ」不良ですが、これは完全な長さ設定におけるオペレーターの人為的ミスと原材料である原反に問題がある場合、そして機械に問題がある場合に分けられます。
まず原反に問題がある場合ですが、原反に規定以上の偏肉(厚みむら)がある場合当然製袋時にスムースにラインが流れません。
また、原料の種別により(例えば、無添加原料のようにスリップ性が悪く規定の寸法調整が困難になる)発生するケースがあります。
また、機械のメンテナンス不良により規定の寸法が出ない場合や、製袋機のライン上原反の流れに対して抵抗が発生したりするケースもあり、さまざまな要因で発生致します。
ただし総論として偏肉・幅・長さなどについては、原反1巻毎に検査検品を行っていれば、見逃す事はほとんどないと考えます。
そんなに小刻みに変動するものでないからです...
◆ 原反不良
(1) 偏肉不良(厚み)
クレームのNo.2は、偏肉不良(厚み)並びに巾不良です。
偏肉はインフレーション工程中の肉厚管理に起因するものですが、ポリエチレンチューブは樹脂の押出し量、風圧、巻取りスピードにより肉厚、巾をコントロールしているのですが、インフレーション法の原理からしてもTダイ法のような高度な精度要求は苦手で発生は避けられないものです。
ただし、そのレベルが問題となります。
今現在の国内の基準としては「 JIS Z-1702 」規格があり、管理ポイントとしては、偏肉(肉厚の最大部分と最小部分の間隔)と平均肉厚(最大肉厚と最小肉厚の平均推移値)です。
ただしこの JIS 規格は 1986 年に制定されている規格で、その後インフレ技術も進歩しているはずですし、インフレ機も最新鋭機の導入も進んでいるでしょうし、もう少し厳しい基準の検討の余地もあると思います。
これは、巾基準、長さ基準にも言える事だと考えております。
よって、供給会社によっては、 JIS ではなく自社基準( JIS より厳しい)を制定しているところも見受けられます。
(2) 巾不良・長さ不良
「巾」ですが、袋の巾は「折径」という表現を致しますが、折径不良には、設定ミスにより全体的に基準値を超えていたり足りなかったりする場合と、「ひょうたん現象」といって大きくなったり狭くなったり変動する場合があります。
これは理由と致しましても、たくさんのケースがあり一概に理由は申し上げられませんが、機械調整部分とオペレーシヨンミスの場合との2つのケースに大別されます。
(3) ブロッキング
次に良くあるクレームとしては「開口性不良」です。
次に良くあるクレームとしては「開口性不良」です。
これは袋の口部分が密着(ブロッキング)していて、口が開けられない状態です。
ひどいものになると、板状になってしまうものもあるくらいです。
これはインフレーションする際、樹脂を溶融する温度が通常値より高い場合に多発します。
それは過熱による樹脂体積内の添加剤が、早期ブリードを促進させ口開きが悪くなる場合や、過熱によるローポリマー分が密着原因を促進する場合などです。
いつものタイプより透明度が極端に良い場合などはこの原因が考えらます。
ただ、静電気防止タイプなどはブリードしなければ静防効果が出ませんし、ブリードし過ぎるとブロッキングしてしまいますので微妙なコントロールが必要な部分もあります。
これらの密着は製袋工程で「2次ブロー」といって、ポリチューブの中にあらかじめエアーを圧入状態で製袋する事により強制的に口開きを行い改善する方法がありますので、多発するものではありませんが添加剤原因の場合には再密着する事もあります。
どちらにしましてもインフレの生産が適性であれば、添加剤混入グレード(AB剤)の樹脂タイプでは発生するものではありません。
(4) 粉吹き
長期在庫品で( 6 ケ月とか 1 年)で包装紙を開封した際袋の表面に粉が吹いたような粉が付着しているケースと、出来たばかりの袋に発生している場合に分かれます。
長期在庫の場合クレームというよりは出るべくして出ているとも考えられます。
ただし、このような場合同じ時期に購入した他のサイズの袋からは発生していないのに・・・という場合がとかくあります。
これは、まず保管条件により粉吹き(ブリーミング)状態に差異がある場合です。(当然高温多湿直射日光が当たる場合促進されます。)
また生産時期は同じだがサイズが違う場合などでは、原反の生産機が異なり使用していた原料グレードの違いによる(LLDPE)原因も考えられます。
ただ、出来たばかりの製品にもこのような現象が稀ではありますが発生します。
これは、原反の製造工程中添加剤を二次添加する際(最近では特殊な製品でもない限りほとんど二次添加はしませんが)誤って多量の添加剤を添加した場合や、原反製造時規定の樹脂温度より高い温度で生産した場合など、製造後ブリーミングが促進されて短期間で現象が発生する場合です。
どちらにしましても生産直後のブリーミングは通常の現象でないのは確かです。